素のままの自分が好きだと、そう告げてくれたから



















ちくちく。ちくちくちく・・・・
居心地が悪い。とても。彼は軽く身じろぎをしたが、その居心地の悪さからは開放されなかった。

それは、彼女のせい。

痛いぐらいの、彼女からの視線。


「いい加減にしろ。君は一体何がしたいんだ。言葉で言え。」
はぁとため息を吐いて彼女を軽く睨めば、彼女は振り返った僕に驚いたのかびくりと身体を強張らせた。

「ああ、それとも君は言葉を発せ無いのだったか?猿以下か」
「し、失礼ねっ!喋れるし知能も猿以上ですーっ!」
「どうかな。そのキーキー声。猿そっくりじゃないか」
ふん、と勝ち誇った笑みを浮かべてやれば、彼女はじろっと睨みつけてくる。正直欠片も怖くないが。


「・・・・・・・で。何なんだ」
本題に戻るが。と呟いて彼女を見ると、彼女は悪戯を見つかった子供のように再び身体を強張らせて後退した。


「・・・・・・・そんなに深い意味は、無いの」

「嘘をつけ。」
彼女は、視線を空に泳がせている。そんな様子じゃ、隠していることがありますと言っているようなものだ。
「・・・早く吐いた方が、身の為だと思うぞ」

視線を合わそうともせず、また少し後退する彼女に、僕は四つん這いになって近づく。


「武力行使は・・・趣味じゃないんだがな?」
にんまり笑って、大きく一歩、彼女に近づく。彼女は、顔を引き攣らせてまた一歩後退。



あと、30センチ


あと、20センチ


身体ごと、彼女に顔を近づけていく。


あと、10・・・・・



「やっ、八雲くんがっ!かっこいいなぁって思って、見惚れてただけっっ!!!」
彼女が真っ赤になった顔の前で両腕をクロスして、半ば自棄的に叫ぶ。



・・・・・・・僕がカッコいいと、見惚れていた?

彼女がおそるおそる腕を解き、こちらを窺うようにして見て来る。
僕は余程酷い顔をしていたのか、彼女はぷっ、と噴き出した。
__________・・・・失礼な。


「カッコいいから、今まで誰かと付き合ったことくらいあるんだろうなぁ、とか。告白とかも、沢山されたんだろうなぁとか、思ってたんだよ」
彼女は一回口に出してしまって吹っ切れたのか、まだ少し赤い顔で僕の目を見つめて言った。

そんな顔で、そんな事言うな。本当に、彼女はどうしてここまで無防備でいられるのか・・・・・・・。


「僕は、恋愛経験は無い。_______・・君が初めてだ」
僕が少し視線をズラして、そしてきっと赤いだろう顔で言うと、彼女は驚いた顔をして、すぐまた赤で染まった。

「そう・・・・なの?」
嬉しいのか、目を輝かせて下から僕を見つめてくる彼女は、殺人的に、・・・・・
「・・・告白されたことは何回かあるが。そんなのは、本当の僕を全く知らない奴らばっかりだった。・・・・素の僕を好きだといった変人は、君が最初で最後だろうよ」

そう。あんな奴らは、僕の内面の闇を、全く知っていない。この目も、この目が齎したものも。
それを含めて、僕を好きだと言ってくれたのは、彼女が初めてだ。そして、そう言ってくれるのは彼女だけで良い。


それを聞いた彼女は、照れから顔を赤く染めながらも、何だか浮かない顔をしていた。
「・・・どうした?」
「だって。・・・その中で誰も、本当の八雲くんを見てくれてない、だなんて」
私が初めて、って嬉しいけど、なんか悔しい。と、不服そうに口を尖らせて呟く彼女が、愛しい。
僕をこんな感情でいっぱいにするのも、彼女だけだ。

思わず笑んで、彼女の額に軽く羽のようなキスを贈る。
「・・・・僕は、君だけがそう思ってくれるだけで、十分だ」

「でも、八雲くん、こんなにかっこよくて、目も、綺麗なのに」
「それも。・・・君だけがそう言ってくれれば、いい」
自分の唇で彼女の唇を塞ぐ。僕が、出来る限りの優しさで。


「好き、だよ・・・八雲君」
「ああ」
キスの合間に、彼女は潤んで熱を持った瞳で僕を見つめて、呟く。
こんな彼女を、愛せずにいられるわけがない。
「僕も、そんな君が___________・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



言いかけて、身体を離す。今そんな事を言ったら、理性が飛んでしまいそうだったからだ。
すると彼女は目をぱちくりと瞬かせてから、むうと頬を膨らませた。
「ねー、なに!?八雲くんっ、続きは?」
「さあね。」
僕の顔はきっと真っ赤だろう。駄目だ、そんな情けない顔、彼女に見せられない。
だが彼女は僕の顔を覗こうと、逃げ回る僕を必死に追いかける。



「ねー、八雲くんっ、そのつづ・・・」
まだ余計なことを言う彼女の唇を、再び塞ぐ。


この台詞の続きは、プロポーズするときにでも言ってやろうか、なんて思いながら。
















甘い・・・・なんですかね、これは。;汗
しかもめっちゃぐだぐだしてますがな。八雲晴香ファンの方々、ごめんなさい・・・;;(土下座)